指名設計競技最優秀賞
受賞
雑誌掲載
新建築1998年12月号掲載
日本建築学会作品選集2000
(共同応募:IMU建築設計事務所 山根秀明)
設計主旨
大田市立図書館の敷地は、大田市のまちのほぼ中央に位置し間近には市民会館、勤労青少年ホームなどの文化施設があり、大田市の文化ゾーンとして位置づけられる地域にある。敷地の東南には大田市のシンボルである国立公園三瓶山を望むことができる。また、敷地の南には三瓶山を源とする三瓶川が流れており、この川を挟んで大田市役所が建っている。このようにこの敷地は大田市にとって重要な場所に位置するが、周辺の環境は景観的に整備されているとはいいがたい。そこで、図書館を計画するにあたって単に図書館という建物をつくるのではなく、周辺の景観整備の核となるような施設としての図書館を考えた。地方都市では、車は市民の足として欠かせない。そのため公共施設にとって駐車場スペースは結構な広さとなり、これを図書館のアプローチ広場と一体となったアメリカフウの林で覆い、町の中の緑の核をつくっている。この緑の核を中心に町全体に緑のネットワークが拡がっていくことを願っている。ここに植えられたアメリカフウは春には新緑を、秋には真っ赤な紅葉と四季折々の表情を見せ町の中に潤いを与える。この林の奥に大田市立図書館は2階建ての回廊に囲まれた円形の「二千年蓮のプラザ」を中心にそれを取り巻く形で建っている。このプラザの池に清楚な花を咲かせている蓮は、古代蓮の世界的権威者であった故大貫博士から大田市に贈られた種子から育ったもので、旧図書館前の広場に植えられていたのを移植したものだ。この蓮を新しい図書館にもち込むことで旧図書館の思い出が受け継がれ新しい図書館のシンボルになることを意図している。回廊に囲まれたこのプラザは、単なる図書館へのアクセス空間ではなく市民にとって気軽に立ち寄ることのできる憩いの場となるように考えている。図書館の各施設はこのプラザに立つと見渡せる。何気なくプラザに立ち寄った人が、ふと図書館に入り、それを機会に図書館に親しんでもらえることを願っている。プラザを取り巻く回廊は立体的な回遊空間になっており、回廊から直接、2階の視聴覚ホールや会議室へアプローチできる。回廊2階の木製スクリーンの足元にはビナンカズラが植えられ、数年後にはパーゴラ全体がビナンカズラに覆われて木陰ができるだろう。回廊に囲まれた「二千年蓮のプラザ」が市民に親しまれ、市民と図書館の出会いの場となることを願っている。
(龜谷清/ナック建築事務所)
※この文章は、新建築1998年12月号に掲載されたものです。
建築データ
主要用途 図書館
建築設計 ナック建築事務所
IMU建築設計事務所
構造設計 石倉保富建築構造設計
設備設計 総合技研設計
造園設計 T&N環境デザイン研究所
施 工 青木組・はたの産業特別共同企業体
敷地面積 6,288.41㎡
建築面積 2,069.42㎡
延床面積 2,581.82㎡
階 数 地上2階
構 造 RC造一部鉄骨造