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みどり薬局

1998年
島根県出雲市

雑誌掲載
商店建築1999年9月号

設計主旨
「みどり薬局」は、JR出雲市駅の南側にあり、周囲はこれから徐々に進められようとする市街化の気配を感じさせつつも、緑のある静かな雰囲気を保っている。偶然にも南側の敷地には、約10年前に私どもの設計による内科医院が建っており、「みどり薬局」は主にそこの調剤薬局として機能している。当然の事ながら、内科医院の設計時には、今回の薬局の設計のことなど予測不能であったため、内科医院は背を向けるように建っている。通常であれば統一性を持たせたデザインを考えてしまいがちであるが、背を向けられているため、むしろ、そのことから解放され、自由にデザインすることができたように感じている。
調剤を基本としているため、訪れる人は患者としてやって来る。処方箋を手渡し、椅子に腰をかけ待つこと10分程度、その間、患者がゆっくりと寛げ、店のスタッフと自然に会話が生まれるように、明るく落ち着いた空間をつくり出し、営利的な「ストア」の雰囲気を消し去ることが求められた。
外観はガルバリウム鋼板とガラスで覆われているため、日差しを受けて建物全体が光を反射させ、ケヤキ並木の道に対して、その存在をアピールしている。訪れた人は、ファサードに設けられた木製ルーバーをくぐり、内部へと導かれる。外部の金属質のイメージとは一転して、待合スペースは木の架構が露わになった吹き抜けのある空間となっている。木製ルーバーは、縞模様の光をつくって空模様や季節感を映し出し、待合スペースに変化を与え、作業スペースであるカウンター内へは光をカットしている。当然、空調の負荷の低減にも役立っている。
建物の周囲には、「みどり薬局」の名のとおり多くの植栽が施されており、ケヤキ並木に面した部分には、隣の内科医院から連続するようにアベリアが密植されており、雑然とした市街化が進むなかで、二つの建物はその緑豊かな落ち着いた雰囲気を保持し続けるだろう。
(龜谷清/ナック建築事務所)

※この文章は、『商店建築1999年9月号』に掲載されたものです。

建築データ
主要用途 調剤薬局
設  計 ナック建築事務所
施  工 株式会社内藤組
     株式会社内村電機工務店
     森田産業株式会社
敷地面積 650㎡
建築面積 138㎡
延床面積 226㎡
階  数 地上2階
構  造 木造

>みどり薬局塩冶店ホームページ

 ▲南側外観。

 ▲吹抜けを見下ろす。

 ▲待合スペースを見る。

 ▲吹抜け見上げ。

 ▲2階廊下から会議室を望む。

 ▲南東側外観。

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