受賞
第11回出雲市まちづくり景観賞
雑誌掲載
商店建築2001年5月号掲載
新しい街のかお
「ヴィラ・フォーシーズンズ」は、出雲市街のちょっとはずれた田園地帯に、区画整理によって出現した新しい街並みの中に計画された。新しい街並みとはいうものの、出雲の落ち着いた風景とは全くかけ離れた、カラフルな木賃アパートの展示場と化してしまっている。そんな状況に危機感を募らせているとき、「ヴィラ・フォーシーズンズ」内の『タンベー』のマスターとアーバンデザイン計画社の藤原徹氏が、出雲の穏やかな風景に溶け込む「木の香りがする街」をつくる構想を持ち出した。
さて敷地は確保したが、テナントは未定。敷地図面に見えない施主を想像しながらマスタープランを描く毎日。その限られたハコの中にテナントが内装を施すのであるが、今回はテナントの要望に応じてハコから建築するというものだった。そのため、マスタープラン通りには事は運ばず、最後に建った棟は、残ったわずかな敷地に合わせて建築せざるを得なくなった。しかし、ハコを設計するときから、デッキや中庭、吹き抜けや軒下空間など、施主の要望を取り込めたおかげで、6人のテナントが納得のいくものを想像できたのではないかと考えている。逆にサインや窓の取り方など、制約を受けて思い通りにできなかった場合もあったのだが、そのことも一体感のある街をつくることの難しさへの理解につながり、完成してからはデッキに植物を置いたり、協力して掃除を行ったり、美観には相当気を使っているようだ。また、それぞれの店から商品やサービスを提供し合って催される結婚式の光景に出くわすこともある。
最初に建築された棟は、出雲の北西からの季節風にさらされ、既に外壁が黒ずんできている。この「ヴィラ・フォーシーズンズ」で活動する人たちとともに、味わい深く時を過ごすことを期待している。
<山名正信※※/ナック建築事務所>
※この文章は、商店建築2001年5月号に掲載されたものです。
※テナント店舗名は竣工当時のものです。
※※元所員。現在は山名建築設計事務所主宰。
建築データ
主要用途 複合店舗
企 画 アーバンデザイン計画
建築設計 ナック建築事務所
施 工 藤原木材産業
敷地面積 1521㎡
建築面積 519㎡
延床面積 505㎡
階 数 地上2階
構 造 木造