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富村の家

2000年
島根県出雲市

雑誌掲載
住宅建築2003年5月号掲載

建築データ
主要用途 専用住宅
家族構成 夫婦+子供2人
建築設計 ナック建築事務所
施  工 石川工務店
建築面積 63㎡
延床面積 73㎡
階  数 地上2階
構  造 木造

設計主旨
「軽快な架構を風が抜ける」
敷地は島根県斐川町。築地松のある散居住宅で有名な農村地帯。出雲神話に出てくる「やまたのおろち」のモデルとされる斐伊川が流れ、近くには荒神谷遺跡が出土した古代ロマンを感じる土地柄である。かつては環日本海交流の拠点であり、大陸からの技術・文化の受け皿であった。現在も日本海海岸には朝鮮半島からの漂流物が流れ着く。
建て主は神戸で生まれ、この地に流れ着いた設計者自身(夫)と、出雲生まれの妻。当時子供一人。現在はもう一人増えた。地代が比較的安い地方とはいえ若い夫婦が大陸からの風が吹き渡るこの地に新たな居を構えるにあたって、否応なしに家訓は<質実剛健>であった。
コンパクトなプランに、どこを切っても同じ金太郎方式の架構がかかる。その架構のリズムの中で空間の連続と機能の複合化を図り、のびやかな空間構成としている。その中心は一直線に伸びる台所から書斎にかけての空間。ここが北側の水廻りと収納、南側の居室をゆるやかにつないでおり、人が動き回る空間となっている。
仕上げは、家訓を反映して、材質を<素>のまま使う方針とした。外壁はガルバリウム鋼板小波板を通気層としたシンプルな外断熱工法とし、室内側は耐力壁の針葉樹合板、間柱を現し。まさに<質素剛健>。
そしてその素材と空間を彩るのが、たっぷりの光と風。東西南北それぞれに、上から下からいろんな光がふりそそぎ、風が渡る。これだけは贅沢だ。
(東本貴弘)

※この文章は、住宅建築2003年5月号「特集/小さな家の豊かな空間」に掲載されたものです。

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