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宍道湖の家Ⅱ

1990年
島根県松江市

用途 週末住宅+社員厚生施設
延床面積 868㎡
構造 RC造
階数 地上3階

第1回GIDグッドインテリアデザインコンペ特別賞

新建築住宅特集1990年11月号掲載

敷地は汽水湖として有名な宍道湖の南岸に位置している。敷地の南は国道9号線に接し、北は一部、宍道湖の中に入っている。宍道湖の湖岸はほとんどがコンクリート擁壁となっていて、自然の砂浜が残っている場所は非常に少なくなっているが、この敷地の一部は、砂浜の状態となって宍道湖の中に入り込んでいる。
敷地からの湖側の景色は順光になるので美しく見ることができる。北東の方向には、松江の市街地が一望でき、特に夜景は素晴らしい。また、北西の方向には、夕日を見ることができる。宍道湖の夕暮れは、じつに美しい。天候、季節、時間によってさまざまな表情を見せてくれる。また、ここから松江まで船で宍道湖を渡っていけば2,3分程度で中心部まで行ける。車で行けば10~15分はかかる。同じように出雲空港までも7~8分で行けるが、車ならその倍は十分にかかってしまう。
かつては、この地域一帯は宍道湖を渡る船を主要な交通機関としていたが、鉄道の開通によってすたれていった。今また、地方では、主要交通機関は、鉄道から車に移ってしまっている。しかし、車には交通渋滞がつきものであり、どうしても時間がかかる。交通路としての宍道湖もまた、脚光を浴びるときがくるように思える。これに対し、敷地の南に接する国道9号線は、年々車の量が増え、朝夕は身動きがとれない。
このような敷地の特性を考慮し、この建物は、宍道湖からのアプローチを考え、北面を正面として扱っている。また、湖と建物との融合を図り、一般の住宅の常識に反してきた面に大きなガラス面をつくり開放性を持たせ、内部空間と外部空間を一体化させている。これに対して国道に面する南面は、内部空間と外部空間とを明確に分断するようにコンクリートの壁を大きく取り、開口は最小限に抑えてある。ただひとつ、玄関の中に入り込んでいるガラスブロックのオーニングだけが内部空間と外部空間を結んでいる。また、国道からは、樹木によってできるだけ隠れるよう意図されているが、まだ樹木は十分に茂っていないので、今はよく見えるが、いずれほとんど見えなくなると思う。この建物の内部空間は、宍道湖の景色を見せることを第一に考えられている。細かな内部空間のディテールは、できるだけ少なくし、湖の景観を内から見せることを最優先させ、常に目が外に向けられるようになっている。
(龜谷清)

▲宍道湖に面した北側の外観

▲1階ガレージは小型船舶やジェットスキーが格納される

▲アプローチのスロープから南側外観を見る

▲風除室・玄関ポーチ ガラスブロックのオーニングが設けられている

▲ラウンジからホールを見る ガラスの欄間や床のレベル差が空間を分節する

▲宍道湖方向に大きく開放されたラウンジ

▲ガラスによって囲われた3階ホール

▲2階ホール

▲2階食堂

▲プール越しに西側外観を見る

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